「債務整理」には〈4つの種類〉がある。…“生活への影響を一番少なくできる方法”とは?【司法書士監修】

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債務整理をしたらどうなるのか、何となくはわかっていても、その全容はよくわからない、という人が多いのではないでしょうか。本記事では、債務整理とはそもそも何なのか、債務整理をするとどうなるのか、自分だけでなく、家族への影響などについて、岡山県司法書士会の立山慶之司法書士監修のもと解説します。

債務整理とは

まず、債務整理とはどのようなものなのか、概要や種類について解説します。

借金の減免ができる制度

債務整理とは、借金の返済が難しくなってしまった人向けに、借金や利息を減免することができる手続きのことです。

債務整理を行うことで月々の返済額を減らしたり、返済条件を見直して返済しやすくしたりすることができます。債務整理の種類によっては、借金そのものをゼロにできる方法もあります。

債務整理の種類

債務整理にもいくつかの種類があり、それぞれ以下のように分けられます。

・自己破産:裁判所を介して、今ある借金をゼロにする方法

・個人再生:裁判所を介して、今ある借金を大幅に減額する方法

・任意整理:裁判所を介さず、債権者と話し合って返済条件を見直す方法

・特定調停:簡易裁判所を介して債権者と話し合い、返済条件を見直す方法

それぞれの債務整理を行うと、どのようなことが起こるのでしょうか。以下で更に詳しく見ていきましょう。

債務整理をするとどうなるのか?

債務整理をしたらどうなるのか、債務整理の種類によって異なることと、すべての債務整理に共通して起こることの両方について解説します。

債務整理の種類によって異なること

債務整理をした場合何が起こるかは、債務整理の種類によって異なる場合があり、それぞれ以下のようになります。

・自己破産:大きな財産を持っている場合は没収されて債権者へ分配される代わりに、借金がすべて免除されます。免責不許可事由に該当する場合は利用できないケースがあります。

・個人再生:負債額によりますが5分の1、最大で10分の1まで借金を減額し、3~5年かけて返済していくように返済条件を見直すことが可能です。安定した収入があり、返済が可能である場合に選択できる方法です。

・任意整理:利息をカットしたり、3~5年かけて返済するようにして月々の返済額を減らしたりすることができます。

・特定調停:利息のカットや返済期間の見直すことができる点は任意整理と同じですが、裁判所を介して行う点と債務者自身が手続きする点などが任意整理とは異なります。調停不成立となることも多く、やや失敗するリスクの高い債務整理でもあります。

どの債務整理にも共通して起こること

どの債務整理を選択したとしても、以下のようなことが起こります。

・一定期間ローンが組めなくなる

・一定期間保証人になれない

・一定期間クレジットカードが使えず、新規作成もできなくなる

・いわゆる「ブラックリスト入り」となる

・専門家へ債務整理を依頼すると督促や取り立てが直ちにストップする

「ブラックリスト入りする」とは、信用情報に「債務整理をした」という事実が一定期間記録されてしまうことを指します。この情報が残っていると、借り入れした金融機関以外の銀行なども情報を共有するため「この人にお金を貸しても返済できないのではないか」と思われ、ローンなどの審査に通りにくくなるのです。

事故情報の記録は、おおよそ5~10年で消えると言われているため、その後はローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることが可能となります。

このほかにも、生命保険募集韻や士業、質屋など、職業によっては選択が難しい債務整理もあります。また、官報に掲載された情報から職場や知人にバレるケースもありますが、そこまで多くはありません。

また、司法書士や弁護士へ債務整理を依頼すると、債務者へ直接取り立てなどができなくなるため、督促や取り立ての電話などがストップします。返済を滞納して時間が経っている場合は、早めに債務整理をはじめた方がよいでしょう。

生活への影響を一番少なくできる債務整理は?

債務整理の中で一番その後の生活に影響が少ないものはどれか、どのようなデメリットがあるのかについて解説します。

手続き後の影響がもっとも少ないのは任意整理

債務整理の中でも、手続き後の影響がもっとも小さいのは「任意整理」です。任意整理は裁判所を介さずに債権者と直接交渉して返済条件を見直す方法となるため、財産を没収されることもありません。

「家族が連帯保証人になっているローンは、そのまま返済し、カードローンだけを任意整理する」など、交渉先を選んで行うことも可能です。また、任意整理の手続きを進めている途中で過払い金が判明した場合は、払い過ぎていた利息が取り戻せる可能性もあります。

債権者の数が少なければ専門家へ依頼した場合の報酬も低く抑えることができるため、自己破産や個人再生に比べると費用面でも負担も少ない債務整理であるといえるでしょう。

任意整理のデメリット

任意整理は手続き後の影響が少ない反面、任意整理によって減額できる借金の額がもっとも少なくなってしまうというデメリットも持っています。

基本的に任意整理でカットできるのは利息のみで元金は減らないため、借金をゼロにできる自己破産や最大で9割も減額できる個人再生に比べると、その効果は限定的となってしまうでしょう。

「任意整理する借金を選べる」「借金の総額が小さく、利息をカットして3~5年で返済できるようになるだけで楽になる」といった場合には、任意整理を選ぶとよいでしょう。

どうしたらよいか判断に迷ったら

「任意整理でどの程度まで返済が楽になるのか知りたい」「自己破産や個人再生をすることができるのか知りたい」と思った場合、自己判断やインターネットの情報だけではなかなか判断が難しいと思います。

債務整理には自己破産、個人再生、任意整理などの種類があり、どの債務整理をするかによって何が起こるかは異なります。

督促や取り立てがストップする、一定期間ローンが組めなくなるなど、どの債務整理をしても起こることもあります。任意整理は手続き後の影響も小さく、返済できない借金をそのままにしているよりも経済的、精神的な負担はかなり軽減されます。

債務整理でいくら借金が減額できるかは債務整理によっても異なり、人によっては利用できる債務整理が限られている場合もあるため、どうしたらよいか判断に迷ったら、一度専門家へアドバイスを求めることをおすすめします。

岡山県司法書士会 司法書士

立山 慶之

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