参院予算委で共産党の吉良佳子議員が奨学金問題などを取り上げた(画像は、参議院インターネット審議中継動画より)

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アルバイトをする大学生らの割合が増えているのは、「生活が苦しい」からか、「就活期間の短縮や好調な就職状況」の影響か――

国会でこんなテーマの論争が交わされた。野党質問と政府答弁には、それぞれ元とする調査結果(分析)があり、主張は平行線に終わったが、奨学金の返済負担の大きさから自己破産に至る若者が増えている問題とも絡み、ネットでも関心を集めている。

首相と共産・吉良氏が議論戦わせる

2019年3月6日の参院予算委員会で、共産党の吉良佳子議員が、学生らの奨学金返済問題を取り上げた。政府からデータを引き出しつつ、返済が必要な貸与型(有利子、無利子)の奨学金の返済に苦しむ若者が増えているとして、利子分免除などの救済策をとるよう訴えた。

吉良氏は、学生の間で奨学金利用への警戒感から「借り控え」が起きており、実家からの仕送り平均額減少とも相まって、「一方でアルバイトに従事する学生が増えている」と指摘。その後、政府側が大学(昼間部)のアルバイト従事者の割合として、「2014年度73.2%、16年度83.6%」という日本学生支援機構(JASSO)による調査結果(18年3月公表)を説明した。

こうしたバイト従事学生の割合増加の理由をどう見るか。柴山昌彦・文科大臣と安倍晋三首相は、全国大学生協連の「学生生活実態調査の概要報告」(19年2月公表)の分析を紹介した。同報告書をみると、学生就業率が増えていることについて「特に4年生は(略)大きく増加した」として、安倍首相らの指摘通り、

「4年生の就労率伸長の背景には就活期間短縮の影響も」
「4年生の就労率は3年連続増加しており、(略)就活期間の短縮や、好調な就職状況も背景にあるとみられる」

との記載が確認できる。

また、首相は「家庭からの給付のみで修学可能」な学生のバイト従事が増えているというデータもあると補足した。これは、先のJASSO調査の数字(2年で約10ポイント増)の内訳で、「家庭からの給付のみで修学可能」な学生が、14年度38.3%から16年度47.5%に増えていることを指している。一方で、「家庭からの給付のみでは修学不自由・困難及び給付なし」の学生では、14年度35.0%、16年度36.0%と微増だった。

吉良氏の方は、大学生協の分析ではなく、JASSO調査結果に付された識者の分析を紹介。これも原文を確認すると、吉良氏の指摘通り、

「授業期間中の経常的にアルバイト従事率の急増をもたらした主要な要因は、雇用状況の好転とは考えられない」
「『貸与奨学金(JASSO奨学金)離れ』によって、奨学金の貸与を受けずに、アルバイトで収入を確保しようとする学生の増加したことが、(略)アルバイト従事率増加の主要因になったものと思われる」

とある。柴山文科相も「借り控え」がバイト従事率増加の原因になっているとの分析が「一部に」あることは認めている。

「答弁は本当に冷酷だ」VS「まるで学生バイトが悪のよう」

こうしたやりとりを踏まえ、吉良氏は、

「生活苦の結果、無理してバイトを増やしている。アベノミクスで『雇用が増えた』などと誇れることではない」

と訴えた。

しかし、安倍首相は「様々な困難を抱えている学生がいることは承知しております」としつつ、「様々な分析や要因がある」として、学生就業率の増加については、

「このことをもって、生活が苦しい学生が増加している、とは言えない」

と答えた(質問と答弁の順番は、一部編集部で再構成)。

この日の予算委の模様は、参院公式サイトの動画で確認できる。

こうしたやりとりを受け、ツイッターでは様々な反応が寄せられた。安倍首相や政府答弁に対しては、

「安倍首相の(略)答弁は本当に冷酷だ」
「ダメだこりゃ」

といった声が挙がっていた。一方で、吉良氏に対しても、

「まるで学生バイトが悪のように語っている」
「根拠が不明確だから、水掛け論に陥ったのではないか」

という指摘が出ている。